アプネアという競技をご存じだろうか。映画『グラン・ブルー』で描かれたジャック・マイヨールとエンツォ・マイヨルカが興じたフリーダイビング、素潜り競技である。学生時代にアプネアに出会い、やがて世界にチャレンジするため、安定した会社員生活を辞めた男がいる。彼が選んだ道は、プロフェッショナルという生き方だった。 |
何気なくレンタルビデオ店で手に取った映画『グラン・ブルー』。深く青い海の色に魅入られ、すぐにダイビングにのめり込んだ。伊豆をホームグラウンドに、長期の休みには沖縄、伊豆諸島、小笠原へと脚を伸ばすこともしばしば。
「でも、スクーバは水中で息ができるし、あまりスポーツライクじゃないんです。ガイドさんと一緒に潜っても、あまり感動できなくて。むしろ自分の身ひとつで深海へ挑むフリーダイビングというスポーツにあこがれを抱き続けていました」
そんななか、1998年に日本代表チームが初めてフリーダイビングワールドカップへ出場することを知る。テレビ番組でそれを知った篠宮は、体に電気が走るのを感じた。
たまたま番組内に登場した女性ダイバー・松元恵さんのショップが大学の近くにあったこともあり、すぐに彼女の主催するアプネアのトレーニングに参加した。そしてフリーダイビングトレーニングの日々が始まる。このとき篠宮はまだ学生だった。
もしかしてプロとしてやっていけるかも
環境保全事業に興味を持っていたという彼は、卒業後、全国の浄水場や排水処理施設を作る企業に就職する。「水をきれいにすること」を生きがいに、そして仕事として生きていこうと考えていたのだが、アプネアに専心しようと考えるきっかけは就職してすぐ訪れたという。レッドシーダイブオフ’99日本代表選考会で、惜しくも総合では代表枠に洩れたものの、ダイナミック種目で2位に入賞するという健闘ぶりを見せた篠宮は、もっと練習して上位を狙いたいと意気込んだ。そのときのことを振り返って篠宮は言う。
「もしかしたら日本のトップを獲って、世界大会でも上位を取れるようになったら目標の世界チャンピオン、ウンベルト・ペリザリのようにプロとしてやっていけるんではないかという考えが薄っすらと脳裏をよぎったんです。そのときからプロとしての目標を持ち始めたのかもしれません」
以来、平日はプール、週末は海でのトレーニングの日々。日本のトップを獲ろう、そして世界のトップへという目標のもと、仕事や上司の顔色を伺いながら、退社するタイミングをみていたと笑って話す。
しかし、決して競技にかまけていたわけではない。会社を定時に出てトレーニングに向かうために、昼食を摂りながら仕事をこなすこともあったという。施工管理監督として出張も多く、現場に出ているときも、終業後はランニングなどを欠かさなかった。週末は西伊豆にあるチームのクラブハウスで合宿。そんなコントラストある生活があったからこそ、職場での評価も高かったという。彼にとって、仕事に打ち込むことは、その対局にある競技とのカウンターバランスだったのかもしれない。
競技と仕事の両立の日々からやがてプロへ
2003年9月28日、日本記録アテンプトプロジェクトF80において76mのコンスタント種目日本新記録を達成した。当時、この記録は世界歴代9位。プロとしての道を歩み始めるための潮時だと強く感じた篠宮は、会社を辞める決心をした。
「もしかしたら世界記録が作れるかもしれないと思ったんです。それには今まで以上のトレーニング時間が必要でした。それにフリーダイビングは非常にメンタルに依存したスポーツなのでストレスや疲れを抱えながらトレーニングをしたり、大会で記録を伸ばすことはこれ以上厳しいと感じたんです。もちろん趣味として楽しめる範囲で続けていく選択肢もあったと思いますが、世界へチャレンジしたかったんです」
今年からホームを沖縄に移し、フリーダイビングのインストラクターとしての活動と同時にトレーニング中心の生活へとシフトした。
「東京と違って沖縄の空気は人をポジティブに、そしてクリエイティブに変えてくれます。毎日、海を眺めて自然の中で暮らすのはここまで人の心にいいものなんだと実感しています。今の季節はクジラが沖縄の海に来ていて、海に潜るとクジラたちの歌声が響き、なんとも言えないほどリラックスできるんです。切なくてちょっと懐かしいような彼らの歌声に地球の大きさを感じる思いがします」
会社員を捨てフリーダイビングのプロとして生きる彼の姿は、職業としての選択支ではない。生き方としての選択なのだということを強く感じずにはいられない。
2005年 参加予定の大会
7月 第3回日本選手権
7月 モナコ ワールドスタティックコンテスト
8月 第1回室内世界選手権 スイス ローザンヌ
9月 第1回コンスタント世界選手権 フランス ニース
9月 BIOS COCACOLA オープン ギリシャ
スクール情報
●PRIMARY フリーダイビング体験コース |
●BASIC フリーダイビング基本コース |
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お問い合せ先:school@apneaworks.com
![]() |
![]() 法政大学在学中からフリーダイビングをはじめ、競技開始3年目にしてダイナミック130mの日本記録を達成。現在はコンスタント76m、スタティック7分7秒のアジアレコードホルダー。現在は沖縄在住。フリーダイビングのインストラクターとして活動を続けながら、プロのアスリートとしての生き方を選んだ。 |
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